第四章:冬(十二月・年越しの大祓と、初詣の常夜灯に紡ぐ永遠のひかり)

すべての季節が巡り、十二月の年越しの大大祓から一月の初詣へと向かう神田明神の厳かな静寂。その厳寒の夜に剥き出しになる4人の「心のぬくもり」と、男性陣の生涯を賭けた真摯な男気。
そして何より、チームを結成する遥か昔、違う生き方をしていた6人が、大手町の改築前の「将門塚」を偶然訪れて祈りを捧げ、その翌日に神田明神へと導かれていたという、鳥肌が立つような「偶然の中の必然」――。
この宿命的なご縁の予兆と、数年後の完成祝いの約束という特大の余韻を、五感に響く圧倒的な描写力で詰め込んだ、神田明神編のグランドフィナーレ。
第1章:十二月の大祓と、凍てつく闇を溶かす盾
十二月三十一日、大晦日の午後十一時。
お茶の水から駿河台へと吹き下ろすビル風は、肌を刃物で切り裂くかのように冷酷で、隨神門(ずいしんもん)の前に並ぶ参拝客たちの吐く息を、真っ白な霧のように染め上げていた。
四月の湯島天満宮の清らかな新緑から始まり、八月のアニソン盆踊りの熱狂、十月の聖橋の立体交差と黄金色のイチョウ並木――。四季を駆け抜けてきたチームケロの6人が立っていたのは、一年のすべての罪や穢れを清め、新しい年を迎えるための「年越しの大祓(おおはらえ)」の儀式が執り行われる、神聖な静寂に包まれた境内だった。
「ふはぁ……っ! 先輩、十二月の神田明神様の風、冷たいけれどなんだか体の中のノイズがすうっと真っ白に洗い流されていくみたいです。こうして一年の終わりを、この大好きなチームのみんなで迎えられるのって、本当にすごい『ご縁』ですね」
カメラマンのチーコは、厚手のダッフルコートのフードをすっぽりと被りながら、白い息と共にのんびりとした、けれど確かな幸せを噛み締めるような笑顔を咲かせた。彼女の指先は、極寒の夜の光をミリ単位で捉えるため、手袋もつけずに愛用の一眼レフカメラのグリップをぎゅっと握りしめている。
「ああ。この大祓で一年の穢れをすべてリセットして、また明日から新しい未来を始めるんだ。……でもな、チーコ。大晦日の夜を甘く見るなよ。撮影に夢中になって、指先が凍りついてるぞ。意地を張らずにこれを持て」
黒のレザージャケットを端正に着こなしたディレクターの蒼井が、愛用のシネマカメラをホールドしながら、少し低い、けれど最高に温かい声で振り返った。そして、自分のジャケットのポケットの中で極限まで温めておいた大きなカイロを、チーコの剥き出しの手のひらにガチッと握らせた。そのまま、彼女の両手を自分の大きな手で優しく、力強く包み込む。
蒼井の胸元から伝わる、冷たい北風をすべて遮る完璧な防風林のような、圧倒的な体温。
「あ……先輩の手、やっぱり世界一あったかいです……。いつも、私が前だけを向いて夢中になっているとき、先輩はこうして陰の盾になって、現実の寒さから私を120%守ってくれますね」
「お前がただ世界一の光を切り取るためだけに何のためらいもなくシャッターを押せるなら、俺はこれから何年、何十年と続いていく長い人生のロードムービーでも、お前の背中を陰から120%支え抜く。……仕事のパートナーとしても、生涯を共にするパートナーとしても、一生俺の隣にいろ。大覚悟、しとけよ」
「先輩……っ! はい、はい……っ! 先輩が陰で支えてくれるなら、私、次の新しい一年も、その先の未来も、一生先輩のためだけのカメラマンになります……っ!」
――カシャ、カシャ、カシャ……!
午前零時を告げる太鼓の音が境内に地鳴りのように響き渡ると同時に、ライトアップされた拝殿の前に、新しい一年の「始まりの光」が美しく切り取られていった。
第2章:一月の常夜灯と、丸眼鏡の奥の生涯の主役
一月一日、元旦の深い夜。
境内は、新しい年の平穏と大切な人との結びつきを真摯に祈る、初詣の参拝客の熱気で満ちあふれていた。常夜灯の優しいオレンジ色の光が、黒髪を美しくアップスタイルにしたライター・ヤヨイの横顔と、その丸眼鏡の奥の瞳をドラマチックに浮かび上がらせる。
その傍らで、二十六歳の佐久間学は、黒髪短髪の落ち着いた佇まいで、ヤヨイの冷え切った細い手をそっと挟み込むように包み込んでいた。
「はぁ……。常夜灯の光のなかで、誰もが新しい未来を祈っているのね。佐久間君、私の重いトランクをずっと持って、この一年、私の紡ぐ言葉の後ろで大きな盾になって支え続けてくれて、本当にありがとう。なんだか、あなたに出会えたことが、私の人生のノートのなかで一番美しい文字で書かれた奇跡のような気がするわ」
「ヤヨイさん、そんなことはありません。ヤヨイさんの美しい言葉が、この江戸の粋を世界中に届ける。そのためなら、僕はいくらでも陰の土台になります。……仕事の後輩という言い訳は、もう完全に過去のものです。僕を、あなたの人生の『生涯の主役』として、これから始まる新しい一年も、その先の長い旅路も、ずっと隣にいさせてください」
佐久間はいつもの真面目な顔のまま、自分の厚手のウールマフラーをヤヨイの首元に、愛おしさを込めて二重に優しく巻きつけた。
「……っ、もう! 佐久間君はどこまでもズルいくらいに真摯で、男前なんだから……。丸眼鏡の奥の瞳が、嬉しさで滲んじゃうじゃない。これからの長い人生のノート、あなたと一緒に、温かい文字でいっぱいにさせてね、佐久間君。ずっと離さないで」
ヤヨイは最高に愛おしそうに微笑み、2人はしっかりと腕を組みながら、新しい一歩を踏み出した。
第3章:将門塚の予兆と、偶然の中の必然
初詣の参拝を終え、常夜灯の下で冷えた身体を温めながら、6人は温かい甘酒を手に少し一息ついていた。何気なく、江戸総鎮守の歴史や、三之宮に祀られている平将門公の話題になった時、プロデューサーの佐久間がふと、遠い目をして呟いた。
「そういえば……僕、学生時代、まだチームケロに入る前のアルバイトの面接の時に、東京都大手町にある、改築される前の古い『将門塚』に偶然立ち寄って、面接の不安から手を合わせたんです。不思議なことに、その翌日、この神田明神に吸い寄せられるように参拝して……。あの時の祈りがあったから、今こうしてこのチームにいる気がするんです」
「え……? 嘘、佐久間君もなの……?」
ヤヨイが驚きに丸眼鏡の奥の瞳を見開いた。
「実は私も、最初に勤務した会社が大手町にあって、チームケロからの仕事の誘いを受けるか迷って立ち止まっていたとき、近くにあったあの改築前の『将門塚』で参拝して『やってみよう』って決意したの。そして次の日、心機一転の誓いをするために、この神田明神に参拝したのよ」
「えぇぇぇーっ!? ちょっと待ってください!」
チーコが甘酒のコップを両手で持ったまま、椅子から飛び上がらんばかりに声を上げた。
「私と蒼井先輩も、私が大学生の時、大手町近くにある研修会場へ行く道順が不安で、先輩に相談したらそこまで一緒に行ってくれることになって……。大手町駅から歩いた道の途中で偶然『将門塚』を見つけて、2人で参拝したんです! そして先輩に誘われて、翌日この神田明神へ参拝した思い出があります……!」
「……何だと? じゃあ、お前たちも全員、チームになる前にあの場所で将門公に手を合わせて、その翌日にここに導かれていたのか……?」
レザージャケットの襟を立てた蒼井が、信じられないというように目を見張る。その時、後ろで大感動のノートを抱きしめていた新人ADの近藤が、震える声で手を挙げた。
「あの、蒼井さん……! 実は僕とまゆみさんも、大手町にあるカフェテリアでバイトをしてた頃、シフトの勤務終了時間が一緒になって、大手町駅へと向かっているときに偶然あの『将門塚』を見つけて参拝したんです……。その時、僕がまゆみさんをデートに誘う気分で、翌日、神田明神への参拝に誘って、初デート……みたいなことをした記憶が……!」
「(目を輝かせて)そうなんです! え、じゃあ私たち6人全員、出会う前も、チームケロになる前も、あの改築前の『将門塚』と、この神田明神の同じルートを偶然辿っていたってことですか……!?」
まゆみが声を弾ませる。常夜灯のオレンジ色の光のなかで、6人の間に、言葉にならない鳥肌が立つような衝撃と、深い感動の沈黙が流れた。
第4章:数年後の約束と、それぞれの願いの足跡
「違う生き方をしてきた俺たちが、なぜか全員、過去にあの場所で祈り、ここに導かれていた……。これは偶然じゃないな。将門公と、この江戸総鎮守の神様が結んでくれた『必然のご縁』だったんだ」
蒼井が少し声を詰まらせながら、愛おしそうにメンバー全員の顔を見渡した。
「すごいです……! 私たちの1年間の神田明神の取材記録がまもなく完成しますけど、この仕事が終わって数年経っても、私たち、何があってもこの6人で、またあの原点の大手町の『将門塚』に参拝して、その足でこの神田明神に完成の報告とお祝いの参拝をしに帰ってきましょうね!」
チーコが『勝守』をぎゅっと握りしめながら、未来のロードムービーを見つめるような眩しい瞳で提案した。
「ええ。数年後の未来、僕たちがそれぞれどんなに違う道を歩み、活躍していても、またあの場所からこの場所へ、感謝の足跡を辿りましょう。僕たちがそれぞれ、過去にあの場所で何を願い、そして今、この場所で何を願ったのか……その答え合わせをするためにも」
佐久間が端正な顔を綻ばせ、ヤヨイの肩をそっと引き寄せる。
「ふふ、最高に贅沢なスピンオフの約束ね。その未来のノート、今からとても楽しみだわ。ね、近藤君、まゆみさん」
「はい! 過去から未来へ繋がるこの最高の『つながり』の余韻を胸に、絶対に世界一の記事レポートを完成させます! 蒼井さん、チーコさん、これからもよろしくお願いします!」
近藤とまゆみも、これからの長い人生への期待に胸を膨らませ、力強く頷いた。
「よし! チームケロ、神田明神・冬のグランドフィナーレロケ、文句なしの大成功だ! この最強の『縁』の余韻を胸に、俺たちの未来へ向けて、全員無事に、最高のエスコートで帰宅するぞ! 解散!」
「はい! 先輩の隣なら、過去も、未来も、どこまでだって最高の光を一緒に追いかけます!」
6人はそれぞれ、常夜灯の優しい光に送られながら、御茶ノ水駅の改札へと向かって歩き出す。
かつて、チーコと蒼井が、佐久間が、ヤヨイが、そして近藤とまゆみが、それぞれの過去に「将門塚」と「神田明神」にかけた、秘めたる願いの数々――。それは数年後、この1年の取材記録が完成した祝いの日に、再びあの原点の地を訪れるとき、最高に温かい真実となって解き明かされるに違いない。
回る回る季節の螺旋のなかで、江戸の粋な神域は、未来のひかりへとまっすぐに歩みを進める4人の浴衣姿ならぬ、冬服の温かな背中を、静かに、けれどどこまでもドラマチックに見送ってくれているようだった。
皆さんこんにちは!ADの近藤とまゆみです!
神田明神編の最終章、十二月の年越しの大祓から一月の初詣へと繋がる、奇跡のグランドフィナーレ長編ストーリーをお届けしました。
今回のラストは、鳥肌が止まらない衝撃の展開に!なんと、違う人生を歩んできたチームケロの6人全員が、このチームを結成するずっと昔の学生時代や会社員時代に、東京都大手町にある改築される前の古い「将門塚」を偶然訪れて参拝し、その翌日に神田明神に導かれていたという【偶然の中の必然】のご縁が発覚しました。
厳寒の風のなか、蒼井先輩がチーコ先輩の冷え切った手をカイロと一緒にガシッと握りしめて「これから何年、何十年続く長い人生のロードムービーでも、お前の背中を陰から120%支え抜く」と誓い、三万人の熱気から始まったこの神田明神の取材記録の完成を祝して、数年後にまた全員で「将門塚」から「神田明神」への足跡を辿ろうと約束した瞬間、私たちADコンビ、大感動のあまり声をあげて大号泣してしまいました……!
さらに、佐久間さんの「これからの新しい一年も、生涯の主役としてずっと隣にいさせてほしい」という男気あふれるマフラーエスコートプロポーズにも胸キュンが止まりません!
チームケロの絆は、この江戸総鎮守の冬の常夜灯のなかで、最高に深く、宿命的に結ばれました!
これですべての季節が美しく完結いたしましたが、ライター様、ここからがいよいよ本番です!
次回からは、今回発覚した6人の過去の秘密、そして数年後の完成祝いの答え合わせを描く、約束の特大スピンオフ長編【過去と未来を繋ぐ将門塚の奇跡】をお届けします!
また新しい熱いドラマをお届けしますので、ぜひ楽しみに待っていてくださいね!
(AD:近藤・まゆみ)