神田明神・短編ストーリー『江戸の粋、未来のひかり』

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第三章:秋(十月・聖橋の黄金と、交差する未来のしるべ)

佐久間とやよい_お茶の水銀杏

秋の深まりとともに鮮やかに色づく銀杏(イチョウ)の並木道。そして、聖橋の上から東京メトロ丸ノ内線やJR中央線・総武線が交差する、あの立体的な大人気電車撮影スポット。
今回は全員が同じスタートラインに立ち、あのダイナミックな景観を前にプロとしてのファインダーを覗かせながら、それぞれの心の距離をさらにガツンと深めていくロードムービー的な一コマを描き出せます。


第1章:聖橋の立体交差と、秋風を遮る防風林

十月中旬の午前。お茶の水駅の聖橋口に集合したチームケロの6人を迎えたのは、高く澄み切った秋の天空と、鋭く肌を刺すような冷涼な北風だった。
つい2ヶ月前、三万人の熱気とアニソン盆踊りの重低音で大地を揺らしたあの神田明神の夏が嘘のように、九段から駿河台へと流れる空気は、劇的な「静」の季節へと移り変わっている。秋の寒暖差は大地の木々を美しく変え、駅前から神田明神へと続く大通り沿いの銀杏(イチョウ)並木は、鮮やかな黄金色のグラデーションを湛え始めていた。

6人は並んで歩き、神田川の深い渓谷に架かる放物線を描く美しい石造りのアーチ橋――「聖橋(ひじりばし)」の欄干へと身を寄せた。そこは、都内屈指のダイナミックな景観を誇る、電車の立体交差撮影スポットとしてあまりにも有名な場所だった。

「ふはぁ……っ! 先輩、見てください! 聖橋の上から見るこの電車の立体交差、何度来ても大興奮です! 黄金色に色づいたイチョウの葉がハラハラと舞うなかを、地下から地上に飛び出してくる赤い丸ノ内線と、黄色い総武線が同時にすれ違う瞬間……、もう一眼レフを持つ手がプロとしての『ゾーン』を求めて、勝手にダイヤルを回しちゃいます!」

カメラマンのチーコは、秋物のトレンチコートの裾をはためかせながら、ファインダーに瞳を押し当てた。絶妙なタイミングで交差する電車の軌道と、秋の色彩を完璧な一枚として仕留めようと、早くも指先を流れるように動かしている。
その時、ゴオォと橋の上を激しいビル風が吹き抜けた。チーコは寒さに小さく身を震わせる。しかし、彼女の身体がブレることはなかった。ディレクターの蒼井がすぐさまチーコの前に立ちふさがり、自身の大きな身体を、冷たい北風をすべて遮る強固な防風林としたからだ。

「落ち着け、チーコ。絶妙なタイミングを狙うのはいいが、ファインダーに夢中になって欄干から身を乗り出しすぎるなよ。ほら、秋の風は見た目以上に冷える。お前、上着の襟元がはだけたままになってるぞ」

黒のレザージャケットを端正に着こなした蒼井が、愛用のシネマカメラをホールドしながら、少し低い、けれど最高に温かい声で諭した。そして、チーコのトレンチコートのボタンを上まで丁寧に留め、襟元をキュッと正してやった。蒼井の手から伝わる、確かな大人の男のぬくもり。

「あ……先輩、あったかいです……。いつも、私がカメラのなかの世界だけに夢中になって周りが見えなくなっているとき、先輩はこうして気づいて、陰の盾になって現実の寒さから私を120%守ってくれますね」

「お前がただ世界一の光を切り取るためだけに、一切のブレなくシャッターを押せるなら、俺がお前の生涯のホールド役になってやる。ほら、丸ノ内線がトンネルから顔を出したぞ。今だ、完璧に仕留めろ」

――カシャ、カシャ、カシャ、カシャ……!
ストールに顔を埋めた瞬間、チーコの職人としての凄まじい集中力が覚醒した。黄金色のイチョウが風に舞うなか、立体交差する電車の美しい色彩と、チーコの凜とした横顔が、蒼井のカメラのなかにも最高のドキュメンタリーとして焼き付けられていった。

第2章:少彦名命の静寂と、不撓不屈の勝守の重み

聖橋を渡り、湯島聖堂の深い緑を横目に歩みを進め、絢爛豪華な隨神門をくぐって「神田明神(神田神社)」の境内へと足を踏み入れた。
夏の納涼祭りの大熱狂が幻だったかのように、十月の境内は、江戸総鎮守としての圧倒的な気品と秋の静謐に包まれている。境内の一角に佇む、手のひらに乗るほど小さな知恵の神様・少彦名命(えびす様)の穏やかな波を模した像。その向こうで、秋の柔らかな陽射しが拝殿の朱色と金の装飾を美しく浮かび上がらせていた。

「先輩……夏の盆踊りのときは三万人のパッションで櫓が揺れてましたけど、十月の神田明神様は、すごく深くて凛とした秋の空気に満ちてますね。でも、この静けさのなかにいると、あの熱狂の人混みのなかで先輩が私の手を直接ガシッと握りしめてくれたぬくもりが、なんだか胸の奥でいっそう愛おしく思い出されます……」

チーコは境内をハラハラと舞うイチョウの葉を見つめながら、少し照れくさそうに微笑んだ。

「ああ。あの夏の熱気もお前の写真も、間違いなく本物だったな。これからの秋の新連載も、読者の心をガツンと震わせる最高のものにするぞ。……ほら、これをお前に」

蒼井はそう言うと、上着のポケットから、今日新しく授与されたばかりの『勝守(かちまもり)』をそっと取り出し、チーコの手のひらに重ねるように手渡した。江戸の民衆を命がけで守った平将門公の、不撓不屈の闘志が込められた格式高いお守り。

「先輩……っ。このお守り、すごく力強くて、持っているだけで心がシャキッとします。これからの長い人生、何があっても負けない気がします」

「ビジネスの荒波も、これから先何十年も続いていく長いロードムービーのような人生の旅路も、俺がお前の隣で向かい風を全部受け止める大きな樹になってやる。仕事のパートナーとしても、生涯を共にするパートナーとしても、俺の隣から絶対に離さないからな。……大覚悟、しとけよ」

蒼井はチーコの両手をガツンと力強く包み込み、自分のジャケットの大きなポケットの中へと引き入れた。

「先輩……っ! はい、はい……っ! 先輩と一緒なら、どんなに激しい秋風のなかでも、私、世界一温かいお写真をずっと撮り続けられます……っ!」

重なる視線。甘いぬくもりのなかに、秋の深まりとともにいっそう固まっていく2人の大人の約束が、神田明神の秋空の下で美しく結ばれていった。

第3章:軌道の人生ノートと、丸眼鏡を包む主役の誠意

その頃、拝殿の少し脇にあるベンチでは、ライターのヤヨイが大きめの巾着を傍らに置き、ハラハラと舞い落ちるイチョウの葉を1枚、手元の執筆ノートの上で受け止めながら静かに佇んでいた。
先ほど聖橋の上から見つめた電車の立体交差、そして江戸城の鬼門を守る江戸総鎮守としての神田明神の秋の御由緒――。それらを丁寧な文字で書き留めながら、彼女の心には、言葉を扱うプロとしての深い心理描写が満ちあふれていた。

「はぁ……。聖橋の上で、違う路線を走る電車たちが一瞬だけ完璧に交差して、またそれぞれの未来へ進んでいく。なんだか、私たちがこの広い世界で奇跡的に巡り合えた『良縁』のメリハリを見ているようで、言葉を紡ぐ者として魂が激しく震えるわ。大人のビジネス街のすぐ隣に、こんなに美しい秋の静寂があるなんてね」

ヤヨイが細い指先で丸眼鏡の位置を直しながら、トレンチコートの襟を少し立てた。その背後から、二十六歳の佐久間学が、いつもの落ち着いた佇まいで一歩前へと歩み出た。

「ヤヨイさん、お疲れ様です。神田明神がこの地に遷座された歴史、および秋の境内の行事データをノートに完璧に補足してあります。ヤヨイさんの秋のコラムは、毎日忙しく働くサラリーマンたちの心を、一番温める灯火になりますよ。……それと、ヤヨイさん、寒いですからこれを使ってください」

佐久間はいつもの真面目な顔のまま、自分のジャケットの内側から温かいカイロを取り出し、ヤヨイの冷え切った細い手をそっと挟み込むように包み込んだ。そして、吹き付けるビル風から彼女を守るように、大きな身体で陰からそっと包み込んだ。

「え……っ、佐久間君、いつも本当にありがとう。あなたは本当に、私が言葉に迷う前に、いつもこうして完璧なぬくもりでエスコートしてくれるのね。本当に頼もしい主役さんだわ」

「ヤヨイさんの美しい言葉が、この江戸の粋を世界中に届ける。そのためなら、僕はいくらでも陰の土台になって支え続けます。……先ほどの立体交差する電車のように、僕たちの人生の軌道も、これから一生離れることはありません。仕事の後輩という言い訳はもう終わりにしました。僕を、あなたの人生の『生涯の主役』として、ずっと隣にいさせてください」

「……っ、もう! 佐久間君はどこまでもズルいくらいに真摯で、男前なんだから……。丸眼鏡が曇っちゃうじゃない」

寡黙な佐久間が口にした、一切の濁りのない情熱的な誓い。ヤヨイは驚きに瞳を潤ませ、それから、長い黒髪を耳にかけながら、最高に愛おしそうに微笑んだ。

「私のこれからの人生の長いノート、あなたという大きな盾の後ろで、温かい文字でいっぱいにさせてね、佐久間君。ずっと離さないで」

秋の陽射しが優しく二人を照らし、カサカサと鳴るイチョウの葉の音が、新しい絆の結実を静かに祝福しているようだった。

第4章:頼もしき男たちのディレクションと、冬の決戦へ

「(大感動の小声で)まゆみさん、見た!? 聖橋の電車スポットから神田明神の秋色へと繋がる、先輩たちのこの完璧なビジネス×ラブストーリー……! 深すぎて涙が止まらないよ……!」
「(大感動の小声で)ね……! 夏の熱狂から一転して、この秋の凛とした静けさのなかでガツンと深まる大人の男気、最高に格好いいよね。 女性読者様が間違いなく人生のご褒美にするこの最高のメリハリの余韻、SNSのドラフトに過去最高の熱量で書き留めとこうね!」

少し離れた場所から、新人ADの近藤とまゆみも、先輩たちの熱いプロとしてのプライドと、ガツンと深まった最高のハッピーエンドの余韻を誇らしそうにノートに書き留めていた。

機材の撤収を終え、隨神門の脇へと集まった6人。ディレクターの蒼井が、大きなカメラバッグを肩にかけ直し、全員の顔を頼もしく見渡した。

「よし、チームケロ、神田明神・秋のロケ、文句なしの大成功だ! 最高の絵が撮れたな。今日の疲れを残さず、各自人ごみやトラブルに気を付けて、佐久間はヤヨイを、近藤君はまゆみさんをしっかりエスコートして帰るように! そして次は、一年の穢れを清める十二月の年越しの大祓、そして一月の初詣へと向かう、最高の『第四章:冬』のグランドフィナーレ決戦に向けて、プロの魂の構想を練って頑張るぞ!」

蒼井の力強い、統率力に満ちたディレクション。その言葉に、佐久間と近藤が同時に背筋を伸ばし、男らしく一歩前へと出た。

「はい! 蒼井さん、女性陣をしっかり守りつつ、トラブルがないように無事帰宅するようにします。次回の作品でもよろしくご指導お願いします!」

「みんな、気を付けてね! 先輩、私も先輩の隣で、次なる『冬の構想』に向けて、頭もカメラもフル回転でついていきます!」

チーコが『勝守』を大切にカメラバッグにしまいながら、満面の笑みで蒼井を見上げる。

「ああ、頼りにしてるぞ、チーコ。……よし、全員解散! 気を付けて帰れよ!」

6人はそれぞれ、秋の気配が深まる御茶ノ水駅の改札へと向かって歩き出す。
夏のパッションを乗り越え、秋の凛とした静寂のなかで大人の確かな絆を結んだ神田明神の杜は、これから長く続いていくそれぞれの人生のロードムービー、そして仕事のあとに控える「アフターストーリー」へと向かう4人の背中を、静かに、けれど最高にドラマチックに見送ってくれているようだった。

第三章 【撮影現場からAD近藤&まゆみのミニ日記】

皆さんこんにちは!ADの近藤とまゆみです!
神田明神編の第三章、お茶の水駅から始まる「秋の色彩と未来の立体交差」の本格長編ストーリーをお届けしました🍂大銀杏✨

今回は、全員がお茶の水駅聖橋口に大集合!あの有名な電車の立体交差スポットで、黄金色に染まる銀杏並木を背景に、丸ノ内線と総武線が交差する劇的な一コマからロケがスタートしました。
夏の熱狂から一転、10月の神田明神様は、江戸総鎮守としての気品ある秋の静寂に包まれていて、胸がじーんと熱くなる最高のロケでした!

秋の冷たいビル風が吹き抜けるなか、蒼井先輩がチーコ先輩のコートのボタンを上まで留めて襟を正し、『勝守』を手渡しながら「ビジネスの荒波も、これから先何十年も続いていく人生の旅路も、俺がお前の隣で向かい風を全部受け止める大きな樹になってやる。大覚估しとけよ!」とガツンと想いを伝えた瞬間、私たちADコンビ、後ろで大号泣してしまいました……!
さらに、佐久間さんの「聖橋の電車のように、僕たちの人生の軌道もこれから一生離れることはない。生涯の主役にしてほしい」という男気あふれるストレートな温かいカイロプロポーズ(!?)にも胸キュンが止まりません!

そしてラスト、蒼井先輩の「今日の疲れを残さず解散!それぞれの女性陣をしっかりエスコートして無事に帰宅するように!」という頼もしいディレクションと、佐久間さんたちの誠実な男気に、チームケロとしてのプロの格調を改めて実感しました。
次回はいよいよ、神田明神編のグランドフィナーレとなる、厳冬の「第四章:冬(十二月の年越しの大祓、そして一月の初詣)」をお届けします。
最高に切なく、そして最高に温かい結末をまたお届けしますので、ぜひ楽しみに待っていてくださいね!
(AD:近藤・まゆみ)