東京大神宮・長編群像譚『結びの社、四季のしるべ』

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本編:東京のお伊勢さま、その光のなかで(完全版長編ストーリー)

チーコと蒼井東京大神宮鳥居前
チーコと蒼井東京大神宮鳥居前
チーコと蒼井東京大神宮参道
チーコと蒼井東京大神宮参道
チーコと蒼井東京大神宮社務所
チーコと蒼井東京大神宮社務所

第1章:飯田橋駅の喧騒と、メディアの宿命

中央・総武線の黄色い電車が、飯田橋駅のホームに滑り込み、鋭い金属音を響かせてドアを開けた。そこは、平日のオフィスワークの熱気と、休日になれば「全国から良縁を求めて集まる女性たち」の期待に満ちた熱気が複雑に交錯する、港区と新宿区、千代田区の境界線だ。

「……ふはぁぁ! ついに来ましたね、飯田橋! 雑誌でもテレビでも、毎年必ず『最強の恋愛パワースポット』として大特集される、あの東京大神宮。駅を出た瞬間から、なんだか街全体の空気が優しくて、女の子たちの『変わりたい』っていうピュアなエネルギーが満ち満ちてます!」

ホームから西口の改札へと続く階段を、重いフルサイズミラーレスカメラを肩にかけ、おてんばな笑顔を弾けさせながらチーコが駆け上がる。キャメル色の厚手のマフラーに顔を埋めた彼女の瞳は、メディアの第一線で戦うプロの輝きと、一人の女性としてのときめきでキラキラと輝いていた。

「浮かれるな、チーコ。今回の企画は、ただの神社紹介じゃない。ヤヨイさんの新連載コラムの、文字通り命運を握る大一番だ。雑誌の『縁結び特集』なんていう手垢のついたテーマを、俺たちの映像と写真でどれだけ『本物の、心にガツンと響くドキュメンタリー』に昇華できるか。プロとしての腕が120%試される現場だぞ」

三十歳を目前に控え、シックな黒の春コートを着こなした蒼井が、愛用のシネマカメラの入ったジンバルケースをガチッとホールドしながら、少し低い、けれど圧倒的な芯のある声でチーコの後ろを付いていく。仕事に対して常に冷徹でストイックな彼だが、チーコの歩幅が窮屈そうに乱れないよう、人混みの波から自らの身体をさりげなく盾にして彼女を守っていた。

「分かってます、先輩! 綺麗なだけの写真なら、誰だってSNSにアップできます。私は今日、ここへ良縁を求めて必死に一歩を踏み出す女性たちの『祈り』の輪郭、その本物の光をファインダーで絶対に仕留めます!」

二人の視線が、飯田橋駅の改札を出た瞬間、カチッと力強く重なった。
ビジネスパートナーとしてお互いの才能を誰よりもリスペクトし合い、愛宕の頂上で「生涯の隣」を約束したからこそ、二人のチームワークはもはや職人技の域に達していた。

第2章:坂道の足跡と、陰から支える男の誇り

オフィスビルと閑静な住宅が混ざり合う富士見の坂道を、6人は一歩一歩上っていく。その中ほどで、ヤヨイはノートを胸に抱いたまま、少しだけ足を止めて呼吸を整えた。

「はぁ……、さすがにこの坂道は、大人の体力には少し堪えるわね。でも、この坂の先に『お伊勢さま』が待っていると思うと、言葉を紡ぐ者として、背筋が優しく伸びるような心地よさがあるわ」

柔らかいピンクベージュのコートの裾を少し揺らしながら、ヤヨイが細い指先で丸眼鏡の位置を直した。長い黒髪をきゅっと結んだ彼女の横顔を、二十六歳の佐久間学は、黒髪短髪の落ち着いた佇まいで真っ直ぐに見つめていた。

「ヤヨイさん、無理をしないでください。取材資料と重いトランクは、すべて僕が持っていますから。ヤヨイさんは、ご自身の五感に集まるインスピレーションのことだけを考えていてください」

「佐久間君、いつも本当にありがとう。あなたが目立たないように、でも完璧に私のトランクをサポートして一歩後ろを歩いてくれるから、私は安心して自分の言葉に集中できる。本当に、贅沢で頼もしいパートナーだわ」

ヤヨイが丸眼鏡の奥の瞳を愛おしそうに細める。佐久間はいつもの真面目な顔のまま、ヤヨイの手が冷えないよう、新しく自販機で買った温かいお茶を彼女の手にそっと手渡した。

「ヤヨイさんの紡ぐ美しい言葉が、この東京大神宮の歴史や御神徳を120%読者の心に届ける。そのためなら、僕はいくらでも陰の土台になります。それが、僕のプロデューサーとしての、いいえ、一人の男としての誇りですから」

佐久間の口にした、一切の濁りのない真摯な本音。ヤヨイは驚きに胸を熱くし、それから長い黒髪を耳にかけながら、最高に幸せそうに微笑んだ。

「(大感動の小声で)まゆみさん、見た!? 飯田橋駅から神社に向かうまでの時点で、先輩たちの真摯さとプロ意識がガツンと炸裂してて、もう胸キュンが限界突破だよ……!」 「(大感動の小声で)ね! この飯田橋の坂道での細やかな優しさ、メディアが絶対に書かない『本物の愛のドキュメンタリー』として、裏方ADコンビの取材メモに過去最高の熱量で下書きしちゃおう!」

新人ADの近藤とまゆみも、先輩たちの背中を追いかけながら、誇らしそうにノートを走らせていた。

第3章:魔除けの猪目と、覚醒する黄金色のゾーン

そして6人は、東京大神宮の神門の前に到着した。門の金具に施された、伝統的なハート型の魔除け文様『猪目(いのめ)』。全国から集まった女性参拝客がスマートフォンを掲げるその場所で、チーコが手水舎でお水を清めた瞬間、彼女の空気感が劇的に一変した。 衣服が擦れる音すら遮断されたかのような、最高出力の「ゾーン」。 ――カシャ、カシャ、カシャ、カシャ!

チーコの指先は、まるで感覚が身体の一部になったかのように滑らかにダイヤルを回し、桃の節句の『雛まつりの祓』の温かさ、夏の『七夕祈願祭』の幻想的な天の川のライトアップ、そして秋の『秋季大祭』の神恩感謝の気品ある静寂を、その一枚のなかに「四季の記憶」として重ね合わせるように完璧な構図で切り取っていく。

蒼井はシネマカメラのジンバルを脇に抱え、チーコのカメラバッグを引き寄せながら、自身の身体を文字通り盾にして彼女を群衆の波から守り続けた。カメラに向き合うチーコの横顔は、息を呑むほどに美しく、圧倒的に格好いい。一人の男として、この爆発的な才能の隣にいられる誇りが、蒼井の胸の奥で激しく燃え盛っていた。

「ふぅぅ……! 撮れました、先輩! 雑誌の特集なんかじゃ絶対に真似できない、ここに集まるすべての女性たちの『幸せになりたい』っていう祈りを全部味方につけた、本物の結びの絵です!」

撮影を終え、いつもの太陽のような笑顔に戻ったチーコが、誇らしそうに液晶画面を見せてくる。そこには、見た者の運命をガツンと好転させてしまうような、圧倒的なパワーを持った絵が並んでいた。

第4章:鈴蘭の音色と、人生のファインダーの真ん中

「ああ、文句なしに世界一の絵だ。……チーコ、最高のロケだったな。でも、俺は今日、この拝殿の前でお伊勢さまの神様に、仕事の成功以上の『生涯の誓い』をしてきた」

蒼井はチーコの両手を、万物を生み出す「造化の三神」の前で、ガツンと力強く握りしめた。息を切らせたまま、まっすぐ彼女の瞳を射抜く。

「お前がただ前だけを向いて、世界一のシャッターを切り続けられるように、俺はお前の生涯の陰の盾になる。仕事のパートナーなんていう生ぬるい境界線は、もうこの聖地に全部結びつけて置いていく。仕事でも、生涯を共にするパートナーとしても、ずっと俺の隣にいろ。俺の人生という名のファインダーの真ん中は、お前だけの特等席だ。大覚悟、しとけよ」

蒼井はそう言うと、チーコの手のひらに、純白の紐で二つの鈴が結ばれた東京大神宮の『縁結び鈴蘭守(すずらんまもり)』をそっと握らせた。風が吹き抜け、チリン、と優しく、けれど確かなハッピーエンドの鈴の音が境内に響き渡る。

「先輩……っ! はい、はい……っ! 鈴蘭のお守りの言葉通りに、私、世界一の幸福を先輩からもらっちゃいました! 一生、先輩の隣を離れません……っ!」

チーコの瞳から、幸せの涙がぽろぽろとこぼれ落ちていく。

そのすぐ隣では、佐久間が自分の厚手のウールマフラーをヤヨイの首元に優しく二重に巻きつけ、彼女の手をそっと両手で包み込んでいた。

「ヤヨイさん、僕はもう、あなたの頼れる後輩という脇役は完全に卒業しました。これからの険しい人生の長い坂道も、僕があなたを陰から全力で支え、背負ってでもトップまで上り詰めます。僕を、あなたの人生の『生涯の主役』にしてください」

「……っ、もう! 佐久間君はどこまでも男気あふれる誠実な直球なんだから……。私のこれからの人生のノート、あなたという大きな盾の後ろで、全部埋め尽くさせてね」

ヤヨイは丸眼鏡の奥の瞳を潤わせ、最高に愛おしそうに微笑んだ。池の中を優しく泳ぐ色鮮やかな錦鯉や、木陰で新春の陽射しを浴びて丸くなっている白い看板猫たちが、6人の新しい門出と、ガツンと結ばれた本物の良縁を静かに祝福しているようだった。

第5章:改札の向こうへ、新しい旅立ちのステップ

「(大号泣の小声で)まゆみさん、見た!? 最高の、これ以上ないハッピーエンドだよ……!」
「(大号泣の小声で)ね! 私たちの余韻日記、SNS用に過去最高の熱量でアップしちゃおうね!」

近藤とまゆみも、先輩たちの幸せな結末を誇らしそうにノートに書き留め、涙を拭った。

「よし、チームケロ! 東京大神宮編、すべての撮影も、人生の良縁の結びも、文句なしの大成功だ! 一度飯田橋駅に戻って、温かいお茶を飲んで、次の新しい聖地へ向かうぞ!」

蒼井の力強い声が、冬の澄み切った境内に心地よく響き渡った。チーコはカメラバッグをしっかりと背負い直し、純白の鈴蘭守を大切に胸に抱きながら、満面の笑みで答えた。

「はい! 先輩の隣なら、どんなに急な坂道でも、どこまででも新しい最高の景色を撮りに行きます!」

6人は再び飯田橋駅への坂道を下り、西口の改札へと向かって歩き出す。その背中を、大都会のビルの谷間にひっそりと、けれど圧倒的な「結び」のパワーを湛えて佇む東京大神宮の杜は、四季を巡って本物の真実を結んだ四人の未来を祝福するように、静かに優しく見送ってくれているようだった。改札をくぐる6人の足取りは、新春の風に乗って、どこまでも軽やかで、幸せに満ちあふれていた。

佐久間とヤヨイ飯富稲荷神社
佐久間とヤヨイ飯富稲荷神社
佐久間とヤヨイ社務所前
佐久間とヤヨイ社務所前