第三章:秋(十一月下旬・黄金色の大イチョウと未来を照らす波紋)

十一月下旬、赤坂氷川神社は一年で最も神々しい色彩に包まれていた。 東京大空襲の猛火を浴びて幹の一部が黒く炭化しながらも、力強く生き抜いてきた樹齢四百年の大イチョウ。その巨木が、今や天を突くほどの圧倒的な黄金色の輝きを放ち、落とされた葉が境内の石畳を一外、美しい金色の絨毯で敷き詰めている。
「うわぁぁ……! 先輩、上も下も、前も後ろも全部真っ黄色です! 綺麗すぎる……!」
チーコは興奮した様子でローアングルからシャッターを切り続けていた。しかし、秋の終わりを告げる風は冷たく、彼女の指先はすっかり冷え切って赤くなっている。
「チーコ、またそうやって夢中になって手袋を外す。指の感覚がなくなったらシャッターを切れないだろ」
蒼井は苦笑しながら彼女の手からカメラをそっと預かり、自分の上着のポケットから温まったカイロを取り出した。そして、躊躇うことなくチーコの冷たい両手を包み込み、自分のポケットの奥深くへとエスコートした。
「あ……先輩のポケット、すごくあったかいです……」
「そのつもりで温めておいたんだよ。俺たちのこれからの未来の映像には、お前の写真が絶対に必要だから。ずっと隣にいてくれなきゃ困るんだ」
蒼井のぶっきらぼうだけど温かい本音に、チーコはきゅっとその手をポケットの中で握り返した。
その少し後方、四合(しあわせ)稲荷神社の前では、ヤヨイが佐久間の厚手のマフラーを首元に優しく巻かれ、丸眼鏡の奥の瞳を愛おしそうに細めていた。
「佐久間君、これじゃあなたが寒くなっちゃうわ」
「大丈夫です、ヤヨイさん。この四合稲荷の前で、四つの幸せが合わさる未来を誓いましたから。ヤヨイさんの『未来のノート』の隣、僕の名前で埋め尽くさせてください。生涯をかけて、あなたを温め続けます」
「……っ、本当に佐久間君は直球なんだから。丸眼鏡が曇っちゃうくらい、胸がドキドキしちゃうじゃない」
黄金色の葉が静かに舞い散る秋の境内で、二つのコンビの未来への約束は、確かな重みを持って深まっていた。