第三章:秋(十月・秋季大祭と、銀杏並木を歩む二つの足跡)

秋の寒暖差が激しくなるにつれ、大参道を埋め尽くす見事な銀杏並木は、鮮烈な黄金色へとその姿を変えていきます。北風が吹き抜けるたび、まるで光の粉雪のように激しく宙を舞い踊るイチョウの葉。その圧倒的な「動」の情景のなかで、一歩一歩、確実に冷たい冬(人生の試練)へと向かう4人の足取り。
だからこそ、お互いの手のぬくもり、陰からそっと支えてくれる男性たちの真摯な眼差しが、これまでのどの季節よりも「ガツン」と深く、切なく胸に染み渡ります。
第1章:三景の変奏と、大参道を狂わせる黄金の吹雪
十月中旬の九段下。高く澄み切った秋の天空からは、容赦のない季節の移り変わりを告げる、冷涼な空気が大波のように押し寄せていた。
この時期の靖国神社は、一年のなかで最も絵画的な美しさが極まる。第一鳥居から一直線に拝殿へと続く、あの見事な大参道。そこを埋め尽くす巨大な銀杏(イチョウ)の並木は、朝、昼、夜と、訪れる時間によって全く異なる「三つの風景」を境内に現出させていた。
朝のきよらかな斜光のなかでは、露に濡れたイチョウが透き通るような純黄色に輝き、
昼の柔らかな陽射しのもとでは、黄金色の絨毯が人々の足元を温かく包み込み、
そして夜になれば、点在する常夜灯の鈍い光に照らされて、大銀杏のシルエットがどこか妖艶で厳かな「影の迷宮」を創り出す。
秋の深まりとともに大きくなる寒暖差は、イチョウの色づきを限界まで鮮やかに引き上げていた。しかし、その静寂を劇的に破ったのは、杜の奥から吹き抜けた、一陣の強い北風だった。
「ひゃあ……っ! 先輩、すごいです……っ! イチョウの葉が、まるで黄金色の吹雪みたい……!」
チーコは秋物のダッフルコートの襟をすぼめながら、のんびりとした、けれど興奮を隠せない笑顔を弾けさせた。
ゴオォ、と風が鳴るたび、何万枚、何十万枚もの黄金色の葉が枝を離れ、激しい光の渦となって宙を舞い踊る。それはまるで、地上のあらゆる光をかき集めて踊る、圧倒的な「動」の極致だった。チーコは浴衣の季節が去り、徐々に「心のぬくもり」を求め始める秋の冷気に身を震わせながらも、首から下げたミラーレスカメラのファインダーへ、吸い込まれるように瞳を押し当てた。
「秋季大祭のこの時期は、一年のうちで最も参道がドラマチックに化けるからな。……でもチーコ、朝晩の冷え込みを甘く見るなよ。ほら、お前がカメラをローアングルで構えるたびに、首元が寒そうだ」
黒のレザージャケットを端正に着こなした蒼井が、愛用のシネマカメラのバランスをジンバルで完璧に保ちながら、少し低い、けれど最高に温かい声で振り返った。そして、自身の首元に巻かれていた、シックなチャコールグレーの厚手のストールを自然な動作で外し、チーコの首元へと優しく、けれど風を完璧に防ぐようにガチッと巻きつけてやった。
ストールに残る、蒼井の確かな体温と、大人の男の匂い。
「あ……先輩、すごく温かいです。先輩のストール、いつも私の冷たい隙間を全部埋めてくれますね」
「お前がただ前だけを向いて、この圧巻の黄金の吹雪を完璧に仕留められるように、周囲の寒さを全部シャットアウトするのが俺のプロとしての誇りだ。ほら、舞い散る光の向こうで手を合わせる参拝客の、その美しい絵から狙っていくぞ」
すぅ、とストールのぬくもりに顔を埋めた瞬間、チーコの瞳に凄まじい「ゾーン」が覚醒した。
――カシャ、カシャ、カシャ、カシャ……!
衣服が擦れる音すら置き去りにするような集中力。チーコは黄金の吹雪のなかで、光と影のコントラストを完璧に計算しながらダイヤルを回し、今を生きる人々の息遣いを切り取っていく。蒼井はチーコのカメラバッグを引き寄せ、彼女の身体が風で絶対にブレないように世界一の盾となってホールドしながら、その凜とした、美しくも職人としてのプライドに満ちた横顔をシネマカメラのレンズで捉え続けた。
第2章:菊花の紋章と、黄金の絨毯に並ぶ二つの足跡
夕暮れから夜へ。常夜灯の光のなか、大参道の石畳は、敷き詰められたイチョウの葉で一面の黄金色の絨毯へと姿を変えていた。最高のカットを収め終えた二人は、静かに降り積もる葉を踏みしめながら、大参道の真ん中を並んで歩いていた。
「ふぅ……! 先輩、完璧な秋のドキュメンタリーが撮れました。カサカサって鳴るイチョウの葉の音まで、全部お写真に写り込んでいるみたいです」
液晶画面を見せてくるチーコの指先は、秋風に晒されて少し冷たくなっていた。
「ああ、文句なしに世界一の絵だ。お疲れ様、チーコ。……ほら、これをお前に」
蒼井はそう言うと、上着のポケットから、今日新しく授与されたばかりの『錦守(にしきまもり)』をそっと取り出し、チーコの手のひらに重ねるように手渡した。鮮やかな菊花紋章が施された、気品ある格式高いお守り。
「先輩……っ。このお守り、すごく格好よくて、持っているだけで心がシャキッとします」
「国の平穏を祈るこの場所で、俺は今日、一人の男としての平穏をお前に誓う。チーコ、これから徐々に、一番冷え込む冬に向かっていくけれど、どんなに激しい北風が吹いても、俺がお前の隣で、その風を全部受け止める大きな樹になってやる。仕事のパートナーとしても、生涯を共にするパートナーとしても、この黄金の絨毯の上に、俺とお前の二人の足跡を、一生並べて刻んでいこう。俺の隣から、絶対に離さないからな」
蒼井はチーコの両手をガツンと力強く、けれどこれ以上ないほど愛おしそうに包み込み、自分のレザージャケットの大きなポケットのなかへと引き入れた。
「先輩……っ! はい、はい……っ! 先輩と一緒なら、どんなに冷たい秋風のなかでも、私、世界一温かいお写真をずっと撮り続けられます……っ!」
至近距離で重なる視線。朝から夜へと変化するイチョウの三景のなかで結ばれた二人の絆は、徐々に心のぬくもりを求める冬のステージへ向けて、これ以上ないほど深く、確かな真実となって結ばれていった。
第3章:寒暖差の人生ノートと、丸眼鏡の奥のぬくもり
その頃、大参道の脇に佇むベンチでは、ヤヨイがトレンチコートの襟を立て、ハラハラと舞い落ちるイチョウの葉を1枚、手元で受け止めながら静かに佇んでいた。朝の爽快な光から、夜の厳かな影へと移り変わる靖国の情景をノートに書き留めながら、彼女の心には、言葉を扱うプロとしての深い大人の心理描写が満ちあふれていた。
「はぁ……。朝のきよらかな光も、夜の厳かな影も、イチョウはただ美しく舞って散っていく。この寒暖差の大きさが、かえって彼らの色づきを最高に鮮やかにするのね。なんだか、人間の人生の試練と、それを乗り越えて深まる愛のメリハリを見ているようで、言葉を紡ぐ者として魂が激しく震えるわ」
ヤヨイが細い指先で丸眼鏡の位置を直しながら、長い黒髪を少しはためかせた。その背後から、二十六歳の佐久間学が、いつもの落ち着いた佇まいで一歩前へと歩み出た。
「ヤヨイさん、お疲れ様です。秋季大祭の由緒、およびこの大参道の銀杏並木が植樹された歴史的データをノートに完璧に補足してあります。ヤヨイさんのコラムは、これから冷たい冬を迎える読者様の心を、一番温める灯火になりますよ」
佐久間はいつもの真面目な顔のまま、自分のジャケットの内側から温かいカイロを取り出し、ヤヨイの冷え切った細い手をそっと挟み込むように包み込んだ。そして、吹き付ける北風から彼女を守るように、大きな身体で陰からそっと包み込んだ。
「え……っ、佐久間君、いつも本当にありがとう。あなたは本当に、私が気づかないような心の寒暖差まで、全部陰から完璧に温めてくれるのね。本当に贅沢なパートナーだわ」
「ヤヨイさんの美しい言葉が、次の冷たい冬を越えて、読者の心に確かな実りをもたらすように。僕はいくらでも陰の土台になって支え続けます。この靖国の銀杏のように、どんな厳しい環境でもヤヨイさんを一番鮮やかに輝かせる男でいること、それが僕の生涯の誓いです。仕事の後輩という言い訳は、もう完全に終わりにしました。僕を、あなたの人生の『生涯の主役』として、この足跡を隣に並べさせてください」
「……っ、もう! 佐久間君はどこまでもズルいくらいに真摯で、男前なんだから……」
寡黙な佐久間が口にした、一切の濁りのない情熱的な誓い。ヤヨイは驚きに丸眼鏡の奥の瞳を潤ませ、それから、長い黒髪を耳にかけながら、最高に愛おしそうに微笑んだ。
「私のこれからの人生のノート、あなたという大きな盾の後ろで、黄金色の美しい足跡でいっぱいにさせてね、佐久間君。ずっと離さないで」
常夜灯の光が優しく二人を照らし、カサカサと鳴るイチョウの葉の音が、新しい絆の結実を静かに祝福しているようだった。
第4章:黄金の吹雪の余韻、そして厳冬の初詣決戦へ
「(大感動の小声で)まゆみさん、見た!? イチョウの葉が風で激しく舞い踊るなかでの先輩たちのプロポーズ、絵づらのインパクトも深さも過去最高にガツンと胸に刺さるよ……!」
「(大感動の小声で)ね……! 朝、昼、夜と風景が変わるみたいに、先輩たちの愛の言葉もどんどん深くなってて、私、後ろで大号泣しちゃった。女性読者様が間違いなく人生のご褒美にするこの最高のメリハリの余韻、SNSのドラフトに最高純度の言葉で書き留めとこうね!」
少し離れた場所から、新人ADの近藤とまゆみも、先輩たちの熱いプロとしてのプライドと、ガツンと深まった最高のハッピーエンドを誇らしそうにノートに書き留めていた。
「よし、チームケロ、秋季大祭・銀杏並木ロケ大成功だ! 最高の絵が撮れたな。撤収して温かいものでも食べて、次は来るべき春への辛抱と、春を愛おしくしのぶ、最高の『最終章:冬』の初詣決戦に向けて、プロの魂の準備を始めるぞ!」
蒼井の力強い、けれど最高に優しさに満ちた声が秋の境内に心地よく響き渡った。チーコはカメラバッグをしっかりと背負い直し、満面の笑みで答えた。
「はい! 先輩の隣なら、どんなに冷たい冬の雪が降っても、暖かい未来の春を一緒に信じて進みます!」
夜が更けるにつれて、静かに、けれど圧倒的な美しさで降り積もるイチョウの葉の絨毯。過去から現在へのバトンを受け取り、新しい真実とプロとしての誇りを結んだ四人の背中を、英霊の杜は、まるで「次の場所でも、最高の表現を」と祝福するように、静かに優しく見送ってくれているようだった。
皆さんこんにちは!ADの近藤とまゆみです!
靖国神社編の第三章、最もドラマチックに境内が色づく「秋季大祭・銀杏並木」の本格長編ストーリーをお届けしまし。
大銀杏!
今回は、朝の清らかな光、昼の柔らかな陽射し、そして夜の常夜灯に浮かび上がる影という、大参道が魅せる「三つの風景」をたっぷり描写しました。
秋の激しい寒暖差のなか、北風が吹くたびに何万枚ものイチョウの葉が、まるで黄金色の吹雪のように激しく舞い踊る姿は、息を呑むほどの圧巻の情景でした!
徐々に心のぬくもりを求める冬のステージへ向かうなか、チーコ先輩が「ゾーン」に入って切り取る光と影のお写真は、プロの執念が詰まっていて本当に格好よかったです……!
ですが、撮影後に蒼井先輩が自分のストールをチーコ先輩に巻きつけ、菊花紋章の『錦守』を手渡しながら「この黄金の絨毯の上に、俺とお前の二人の足跡を、一生並べて刻んでいこう。ずっと、離さないから」とガツンと想いを伝えた瞬間、私たちADコンビ、後ろで大号泣してしまいました……!
さらに、佐久間さんの「ヤヨイさんの美しい言葉のために、いくらでも陰の土台になる。後輩を卒業して、生涯の主役にしてほしい」という男気あふれるストレートな温かいカイロプロポーズ(!?)にも胸キュンが止まりませんでした!
チームケロの絆は、秋の黄金色の吹雪のなかで、最高に熱く、優しく美しく結ばれました!
次回はいよいよ、靖国神社編のグランドフィナーレとなる、厳冬の「最終章:冬(一月・初詣と、三月・桜の標本木に紡ぐ未来への約束)」をお届けします。
冷たい冬をともに耐え忍び、必ず訪れる暖かい春を愛おしく偲び合う最高の結末をまたお届けしますので、ぜひ楽しみに待っていてくださいね!
(AD:近藤・まゆみ)