『オフのカメラと、ふたりだけの十色(といろ)の祈り』

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ちーこ&蒼井の東京十社プライベートトラッキング

第一章:ちーこのおねだりと、蒼井の敗北

「ねぇぇぇ〜〜〜っ! 蒼井さん! お願いだから一緒に行ってよぉ〜っ!」

『チームケロ』の編集部。佐久間とヤヨイが提出した『東京十社めぐり』の社内共有会が終わった直後、打ち合わせスペースにちーこの大声が響き渡った。 首からいつも下げているプロ用の重い一眼レフはなく、私服のサロペット姿のちーこが、蒼井のシャツの袖をブンブンと引っ張っている。

「おいちーこ、袖が伸びる。……だいたいな、取材はもう佐久間とヤヨイさんで完璧に終わってるんだぞ? なんで俺たちがプライベートで行く必要があるんだ」

PCモニターから目を離さず、黒縁メガネの位置を直しながら冷ややかに返すチーフプロデューサー兼映像クリエイターの蒼井。しかし、ちーこは引かない。

「だって! ヤヨイさんの記事読んだら、めちゃくちゃ楽しそうだったんだもん! 亀戸天神のくず餅も、門前仲町の深川めしも、品川神社の富士塚も、全部仕事抜きで、プライベートで味わいたいじゃん! 蒼井さんと一緒に巡りたいの!」

「……っ」

「蒼井さんと一緒じゃなきゃ、意味ないんだから……!」

上目遣いでまっすぐに見つめてくるちーこの瞳。普段は現場で男勝りにカメラを構える彼女が、頬をほのピンクに染めて切なく懇願してくる姿に、蒼井はガシガシと頭をかいた。

「……ハァ。分かったよ、負けた。ただし! 土日を使った完全プライベートだ。仕事のカメラは持っていくなよ。スマホだけで楽しむんだ」

「やったぁぁぁ! 蒼井さん大好き! 約束だからね!」

飛び跳ねて喜ぶちーこを見て、蒼井はメガネの奥でそっと呆れつつも、嬉しさを隠しきれずに口元を緩めたのだった。

第二章:都心を駆け抜ける前編——和菓子と富士塚と千本鳥居

こうして始まった、ちーこと蒼井の完全プライベート十社巡り。仕事のタイムスケジュールも撮影コンテもない、自由で甘酸っぱい週末がスタートした。

【赤坂氷川神社】——静寂のベンチと缶コーヒー

旅の始まりは、新緑の木漏れ日が美しい赤坂氷川神社。大きなイチョウの木陰にあるベンチに、私服の二人が並んで腰掛けていた。

「ふぁ〜、やっぱり休日の神社って空気が澄んでて最高! 蒼井さん、はい、冷たい缶コーヒー!」

「サンキュ。……佐久間たちはここで取材の緊張感をほぐしたらしいが、仕事抜きでこうして二人で座ってると、妙に落ち着かないな」

「え〜? 蒼井さん、私と並んで座ってるから緊張してるんでしょ? デートみたいでドキドキしてる?」

「……デ、デートだろ、最初から。俺を誘ったのはお前だぞ」

「えへへ、蒼井さん顔赤い! かわいい〜!」

【日枝神社】——千本鳥居と『サルタヒコのお守り』

続いて訪れたのは赤坂の日枝神社。朱色の千本鳥居が連なる階段を上る途中、ちーこがそっと蒼井の服の裾をつまんだ。

「わあ……朱色がすごくキレイ! 蒼井さん、ここ道ひらきの神様(猿田彦神)がいらっしゃるんだって。これ、お揃いで持とうよ!」

ちーこが授与所で買い求めたのは、開運・道ひらきの『サルタヒコのお守り』。

「おいおい、勝手にお揃いにするなよ……(と言いつつ、嬉しそうに財布にしまう蒼井)。ちーこ、階段で躓くなよ」

「大丈夫! 蒼井さんが横にいてくれれば転ばないもん!」

【品川神社】——富士塚の登頂と「品川宿の焼き芋」

品川神社へ移動した二人は、境内の北馬場浅間神社(富士塚)へ。

「すごーい! 本物の富士山に登ったみたい! 蒼井さん見て見て、品川の街が一望できるよ!」

「おい、頂上で跳ねるな、危ないだろ! ……ほら、手出せ」

手を差し出す蒼井に、ちーこは満面の笑みで自分の小さく温かい手を重ねた。参拝後、門前商店街で買った名物のほくほくの「焼き芋」を半分こしながら、二人は頬を緩ませた。

「んん〜っ! お芋あま〜い! 蒼井さんのお口にも、はい、あーん!」

「……っ! 外で『あーん』とかやるな! ……(パクッ)……美味いけどさ」

【根津神社】——ツツジ苑の風と「甘味処の串団子」

四月、緑豊かなツツジ苑が広がる根津神社。千本鳥居を潜り抜けたあと、二人は参道沿いの老舗甘味処へ滑り込んだ。

「香ばしいみたらし団子、最高! 蒼井さん、ヤヨイさんの記事にあった通り、江戸の情緒がそのまま残ってるね」

「そうだな。仕事のロケハンだとじっくり味わえないが、お前と食うと何でも美味いな」

「……えっ!? 蒼井さん、今さらっとすごいくすぐったいこと言った!?」

「な、なんでもない! 早く食って次行くぞ!」

【神田神社(神田明神)】——勝守と「明神甘酒」

江戸総鎮守・神田明神。大きな鳥居を潜り、参道名物の『天野屋』で冷たい明神甘酒を飲みながら一息つく。

「米麹の優しい甘さが身体に染み渡る〜! 蒼井さん、神田明神といえば『勝守』でしょ! これ、蒼井さんにあげる!」

「『勝守』? なんで俺に?」

「これから蒼井さんが作る映像コンテンツが、全部世界一バズりますようにって! 蒼井さんは私の自慢のプロデューサーだもん!」

「……ちーこ。お前な……(照れ隠しに甘酒をぐっと飲み干す蒼井)。ありがとな」

第三章:季節と街を越える後編——和食と絶景と誓い

【亀戸天神社】——三つの太鼓橋と「船橋屋のくず餅」

心字池に架かる男橋・平橋・女橋の三つの太鼓橋を渡る二人。

「過去・現在・未来を渡る橋なんだって! 蒼井さん、私ね、蒼井さんと出会えて(過去)、いまこうしてデートできて(現在)、これからもずっと一緒にいられたら(未来)、最高に幸せだな!」

「……お前は本当に、ストレートに胸に刺さることを言うな」

参拝後は門前の老舗『船橋屋』本店へ。黒蜜ときな粉がたっぷりかかった冷たいたずねくず餅を突き合いながら、二人の距離はさらに縮まっていく。

【白山神社】——紫陽花の緑と『菊理姫の縁結び守り』

閑静な学生街に佇む白山神社。六月のあじさいまつりを前にした新緑の境内で、二人は和合の女神・菊理姫命の前で手を合わせた。

「菊理姫様は『くくる(縁結び)』の神様なんだって。蒼井さん、これ!」

ちーこが差し出したのは、可愛らしい『菊理姫の縁結び守り』。

「ちーこ……これ、縁結びだぞ?」

「うん! 仕事のパートナーとしても……それ以外でも、蒼井さんと私の縁が一生解けませんようにって、お願いしたの!」

「……ハァ、お前には敵わないな。……よし、一生解かないでおいてやるよ」

【王子神社】——大イチョウと『ヤタガラス守り』

王子駅から北とぴあを抜け、音無川の高台にある王子神社へ。樹齢六百年を超える大イチョウの見事な青葉を見上げる。

「うわ〜! すごい生命力! あ、蒼井さん、三本足の『ヤタガラス守り』があるよ! 導きの神様なんだって!」

「八咫烏か。正しい道へ導いてくれる神様だな」

「ねえ蒼井さん。私がカメラの道で迷いそうになったら、蒼井さんが八咫烏みたいに正しい方向へ引っ張ってね?」

「当たり前だ。俺がいつでもお前の導き手になってやる」

【芝大神宮】——千木筥(ちぎばこ)と「芝の生姜飴」

東京タワーを仰ぎ見る芝大神宮へ。関東のお伊勢様として親しまれる境内で、二人は千木(千着=着物が増える=良縁・幸福)に通じる伝統工芸品『千木筥』を拝受した。

「藤の花が描かれてて、振るとコトコト音がして可愛い〜! 芝名物の生姜飴もピリッとして美味しいね!」

「良縁のお守りか。……ちーこ、これ、部屋の目立つところに飾っておけよ」

「うん! 蒼井さんとの思い出の一番目の場所に飾るね!」

【富岡八幡宮】——伊能忠敬像と「至福の深川めし」

そして旅のグランドフィナーレは、深川の富岡八幡宮。伊能忠敬像の前で、二人は全十社を無事に巡りきった達成感に包まれていた。

「伊能忠敬様みたいに、私たちも東京十社を全部巡りきったね、蒼井さん!」

「ああ。プライベートで全十社……最高の旅だったな」

参拝後、門前の老舗で名物の『深川めし』を味わう二人。アサリの豊かな出汁が染み込んだ温かいご飯を頬張り、ちーこが感動の声をあげる。

「んん〜っ! アサリの旨味がじゅわ〜って広がる! 美味しすぎて泣きそう!」

「ふっ、口の横にご飯つぶついてるぞ(そっと指で取ってあげる蒼井)」

「あ……っ(急に顔が真っ赤になるちーこ)」

第四章:二人の未来と、新たなる旅立ち

深川めしを食べ終え、夕陽が赤坂の街を黄金色に染める頃。二人は手をつないで静かな参道を歩いていた。

「ねえ、蒼井さん。佐久間さんとヤヨイさんの大人のロマンチックな十社巡りも素敵だったけど……私たちの十社巡りも、食べ歩いて笑って、最高に楽しかったね!」

「ああ。あいつらとは全然違う、俺たちだけの『東京十社』になったな」

蒼井はつないだ手に少しだけ力を込めると、足を止め、ちーこの顔を真っ直ぐに見つめた。

「ちーこ。仕事のカメラマンとしても、そして……一人の特別な女性としても。これからもずっと、俺の隣にいろ」

「……っ! 蒼井さん……! うんっ! もちろんだよ! ずっとずっと隣にいるからね!」

ちーこは丸い瞳をウルウルと輝かせ、蒼井の腕にギュッと抱きついた。

仕事から始まり、お互いの絆を確かめ合った二人のプライベート十社巡り。 この最高の旅の余韻を胸に、チームケロの全員はいま、次なる開運の舞台——都心の地下鉄を巡る『東京福めぐり』という新たな物語へと、賑やかに歩み出していくのだった!