【第一部:佐久間&ヤヨイ 取材短編】
『元吉原の鎮守と末廣の扇——勝運の神に託す未来の広がり』
松島神社を後にした二人は、人形町二丁目の風情ある路地を抜け、厳かな気品をたたえる末廣神社へと辿り着いた。 木造の端正な社殿を見上げたヤヨイは、手元の取材ノートを開きながら目を輝かせる。
「ここがかつて元吉原の総鎮守だった末廣様ね。路地の奥にあるのに、空気がキリッと引き締まっているわ」
木々模様のジャケット姿の佐久間が、ヤヨイの取材用ペンをサッと手渡しつつ穏やかに微笑んだ。
「ええ。慶長元年以前の創建と伝わります。明暦の大火で吉原が浅草へ移転した後も、この地の町衆の守り神として大切にされてきました。社殿修復の際に古雅な『中啓(末廣扇)』が見つかったことから、末広がりの繁栄と勝運を授ける社として信仰されています」
「末広がり……! 災難を越えて希望の象徴となった歴史が、今もこの場所に息づいているのね」
二人は並んで二拝二拍手一拝。武神であり財宝と勝運を司る毘沙門天に深く手を合わせた。
「佐久間君、私たちが届ける言葉の旅も、この扇のように末広がりに読者の心へ広がっていくといいわね」
「ええ。あなたの紡ぐ素晴らしい世界を、僕がプロデューサーとしてどこまでも広く、力強く届けてみせます」
佐久間の揺るぎない眼差しに、ヤヨイは心強そうに頷き、取材ノートへ確かな一筆を刻み込んだ。
【第二部:ちーこ&蒼井 スピンオフ・Private短編】
『天然たい焼きの湯気と末廣扇——勝負の神様に誓う相棒の絆』
「わぁ〜っ! 蒼井さん見て! 末廣神社って、お扇子の『末広がり』から名前がついたんだって!」
休日の路地裏。私服姿のちーこは、末廣神社の案内板を指差しながら弾んだ声を上げた。
「ああ、勝負運や厄除けの毘沙門天が祀られている社だな。動画コンペや大事な仕事の前にはぴったりの場所だ」
「じゃあ蒼井さん、しっかりお参りしなきゃ!」
二人は並んで毘沙門天に手を合わせ、仕事の成功と安全を祈願。参拝を終えた蒼井が社務所で末廣扇を象った「勝運御守」を受け、ちーこの手にそっと手渡した。
「ほら、ちーこ。次の撮影現場の安全祈願だ」
「わっ、お揃いの勝運守り! ありがとう蒼井さん! ……あっ、そうだ! 勝負の神様にお参りしたあとは、あそこの勝負グルメに行かなきゃ!」
ちーこが蒼井の手を引いて向かったのは、近くの老舗『柳屋』。一匹ずつ丁寧に焼き上げられる天然物のたい焼きを買い、焼きたての温もりを半分こする。
「んん〜っ! 皮がパリッパリで、熱々の粒あんが最高〜っ! 蒼井さん、はい、あーん!」
「……外で恥ずかしいって(と言いつつも、ちーこの差し出す熱々のたい焼きを頬張る蒼井)。……確かに、あんこの甘さが絶妙だな」
「でしょ! 勝運の毘沙門天様とお守りもあるし、美味しいエネルギーも補給したから、蒼井さんのこれからの作品はぜ〜んぶ大成功間違いなしだよ!」
「お前が隣でカメラ回してくれるなら、負ける気はしないな」
「えへへ、言ったね! 私、ずっと蒼井さんの最高の相棒でいるからね!」
冬の茜空の下、二人は温かいたい焼きの甘みと末広がりのお守りを胸に、笑顔で次の参拝地へと歩みを進めた。