麻布氷川神社・参拝短編ストーリー2

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「ねえ、蒼井」

「何だ」

「私たちも何か約束したことあったっけ」

「大学の頃?」

「うん」

「機材を借りたら返す」

「それはルール」

「締め切りを守る」

「それもルール」

「撮影に遅刻しない」

「私、そんな約束した?」

「した」

「覚えてない」

「だから守らないのか」

チーコは笑った。

「もっと大きいの」

「大きい?」

「いつか一緒に何かしよう、とか」

蒼井は少し考えた。

「ある」

チーコが目を丸くした。

「え?」

「大学卒業のとき」

「何て言った?」

「チーコが、『いつか自分たちの企画で、東京中を撮りたい』って」

チーコは黙った。

言った。

確かに言った。

卒業式のあと。

サークル仲間と別れた帰り道。

「蒼井、覚えてたの?」

「ああ」

「私は忘れてた」

「今やってるからな」

チーコは境内を見回した。

神社。

カメラ。

蒼井。

チームケロ。

自分たちの企画。

「本当だ」

「約束は果たしたな」

チーコは少し考えた。

「まだ」

「何が」

「東京中って言ったなら、まだ途中」

「そうだな」

「じゃあ、まだ返せないね」

「何を」

チーコは勝守のある授与所を見た。

「約束」

蒼井は少しだけ笑った。

「なら、最後までやればいい」

「一緒に?」

「最初からそのつもりだ」

また答えが早い。

チーコは困って、狛犬へカメラを向けた。

「チーコ」

「何?」

「顔が赤い」

「暑いから」

「九月だぞ」

「まだ暑いの!」

シャッターを切る。

向き合う狛犬。

どちらが勝っているのかは分からない。

でもきっと。

大事なのは、勝つことより。

逃げずに向き合い続けることなのだ。