第四章 かえるの後ろの封筒
昼過ぎ、チームは境内へ戻った。
チーコは大小二体のかえるの前でしゃがみ込んでいた。
「何をしてる」
蒼井が聞く。
「小さいかえるの後ろに、何かある」
石像の台座と植え込みの間に、白い紙の端が見えている。
チーコが手を伸ばそうとすると、蒼井が止めた。
「触るな」
「見つけたのは私よ」
「だからといって触っていいとは限らない」
蒼井は神社の担当者を呼んだ。
紙は、小さな封筒だった。
雨には濡れていない。
表には何も書かれていない。
担当者が開けると、中から写真が一枚出てきた。
戦前と思われる麻布の町並み。
その中央に、鳥居が写っている。
「旧竹長稲荷神社でしょうか」
佐久間が写真を確認する。
「おそらく」
写真の裏には、鉛筆で短い文章が書かれていた。
《宝船の八人目は、帰る場所を失った者》
「何これ」
チーコが目を見開いた。
蒼井は封筒を見た。
「印影資料を持ち出した人物が置いた可能性がある」
「犯行声明?」
「大げさに言うな」
「でも、謎の文章よ」
「単なる悪戯かもしれない」
佐久間は写真の裏書きを見ていた。
「新しい鉛筆です。古い文章ではない」
ヤヨイが封筒の内側を確認する。
「紙にも特別な特徴はありません」
「防犯カメラは?」
近藤君が尋ねた。
担当者は首を横に振った。
「かえるの石像付近は、角度的に映りにくい場所です」
蒼井は境内を見回した。
石段。
宝船。
かえる。
狛犬。
社務所。
小さな境内だからこそ、誰かが何かを置けば目につきそうなものだった。
だが港七福神期間中で、参拝者は途切れない。
人に紛れるのは難しくない。
「この写真、どこから来たのか調べられますか」
まゆみさんが尋ねた。
担当者は写真を見つめた。
「似た写真が、地域資料館にあるかもしれません」
佐久間がすぐにスマートフォンを取り出す。
「確認します」
チーコは小さなかえるを見た。
「どうして、ここに置いたのかな」
「かえるだからだろう」
蒼井が答える。
「帰る場所を失った者。かえるの後ろ」
「言葉遊びね」
ヤヨイが言う。
「でも、誰に向けた言葉なんでしょう」
誰も答えられなかった。