麻布氷川神社・長編ストーリー【チーコと蒼井の現代編】

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第八章 自分自身に勝つ

麻布氷川神社、鳥居前、チーコと青井
麻布氷川神社、鳥居前、チーコと青井

授与所へ寄る。

チーコは勝守を手に取った。

「受けるのか」

「うん」

「何に勝つ」

「言わない」

「自分自身?」

「そうかも」

その横。

えんむすび守。

チーコは今回は見ないようにした。

すると蒼井が、

「そっちはいいのか」

と言った。

「え?」

「前に見てただろう」

「覚えてたの?」

「ああ」

「見てない」

「見てた」

「デザインを」

「そうか」

「何よ」

「何でもない」

今度は蒼井が少し楽しそうだった。

「蒼井は何か受けないの?」

「今はいい」

「勝守」

「必要になったら」

「何に勝つ?」

「言わない」

「真似した」

「公平だろう」

二人は参拝を済ませた。

夕方の鳥居を出る。

坂道を下る。

チーコは新しい勝守をバッグへ入れた。

「ねえ、蒼井」

「何だ」

「さっき言ってた、言えないこと」

「まだ聞くのか」

「聞くだけ」

「まだ言わない」

「いつ言うの」

蒼井は歩きながら答えた。

「勝てたら」

「誰に?」

「自分に」

チーコは黙った。

それ以上聞けなかった。

でも、少しだけ期待してしまった。

自分に関係することだったらいい。

そう思った。

それこそ、自分が向き合わなくてはいけない気持ちなのかもしれない。