第四章 三組、三方向
ケロへ事情を伝えると、数分後にビデオ通話が始まった。
《まず確認します》
スマートフォン画面の中で、ケロが真面目な顔をしている。
《歴史的事実と創作は混ぜないこと》
「まだ創作してないよ」
チーコが言う。
蒼井が横から、
「チーコの頭の中では始まってる」
と言う。
《次に、高瀬家の個人情報は本人の許可なく公開しない》
「はい」
全員が答える。
《最後に》
チーコが嫌な予感を覚える。
《追加交通費が発生する場合は事前申請》
「そこ?」
《大事です》
ケロの指示で、三組に分かれることになった。
チーコと蒼井
飯倉熊野神社境内と太田道灌・八咫烏・恵比寿太田稲荷の映像資料確認。
佐久間とヤヨイ
高瀬隆吉の記録と戦前の飯倉周辺資料。
近藤君とまゆみさん
地域住民や古くからの商店への聞き取り。
ケロは全体調整とオンライン資料検索。
「役割分担すると、本当に仕事してるチームみたい」
チーコが言う。
蒼井が振り返る。
「仕事だ」
「知ってるわよ」
「時々忘れてるように見える」
二人は恵比寿太田稲荷社の前へ移動した。
「太田道灌は、出陣や凱旋のときに参拝したと伝わってる」
チーコがメモを見る。
「鯛を供えた」
「ああ」
「勝ったから鯛?」
「戦勝祈願や凱旋時の感謝と伝わる」
「じゃあ、勝つだけじゃ足りない」
「何が」
「帰ってきて、ありがとうって言うところまでで一つ」
蒼井は少し黙った。
「それは使える」
「でしょ」
「映像の構成として」
「そっち?」
「他に何がある」
チーコは不満そうな顔をした。
だが内心では、少し嬉しかった。