飯倉熊野神社・長編ストーリー【TeamKero現代編】

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第二章 勝ちたい人たち

境内は大きくない。

けれど、桜田通りの車の音を背中にして数段上がるだけで、視線の高さが変わる。

チーコは早くもしゃがみ込んでいた。

「低いところから撮ると、鳥居が大きく見える」

「道路側へ下がりすぎるな」

蒼井が後ろから言う。

「分かってる」

「昨日も聞いた」

「昨日は別の神社」

「同じ意味だ」

佐久間は拝殿周辺の意匠を撮影。

ヤヨイは授与品と案内板を確認。

近藤君とまゆみさんは参拝者の動線を見ていた。

「港七福神の時期だと、ここに人が増えるんですよね」

近藤君が言う。

「恵比寿様ですからね」

まゆみさんが答える。

「それに、サッカー御守。そこだけで読者層が変わりそう」

授与所の前には、青と白を基調にしたサッカー御守が並んでいた。

チーコが気づく。

「かわいい」

蒼井は見もしないで答えた。

「サッカーはしないだろう」

「前も言った」

「事実は何度言っても変わらない」

「勝負運なら使えるじゃない」

「何に勝つ」

「締め切り」

「早く始めろ」

「睡魔」

「早く寝ろ」

「蒼井」

「それは勝負ではない」

横で聞いていたヤヨイが吹き出した。

「お二人、朝から通常運転ですね」

「私は真面目に取材してるの」

「蒼井さんも真面目に止めてます」

「止められてないけどな」

佐久間が小さく言った。

チーコが振り返る。

「今、佐久間君しゃべった?」

「しゃべりますよ、普通に」

まゆみさんまで笑った。

そのとき。

拝殿の前から、大きな声が聞こえた。

「絶対、勝たせてください!」

六人がそちらを見る。

高校生くらいの少年が一人、かなり深く頭を下げていた。

ジャージ姿。

手にはサッカーボール用のバッグ。

少年はもう一度柏手を打ち、長い時間頭を下げていた。

参拝を終えると授与所へ行き、青いサッカー御守を一体受ける。

そこまでは普通だった。

しかし少年は境内を出ようとして、恵比寿太田稲荷社の前で止まった。

何かを取り出した。

赤い小さな鯛だった。

「鯛?」

チーコが反応する。

佐久間も目を細めた。

少年はその小さな鯛を、社の前へ置こうとした。

神社の人が気づき、丁寧に声をかけた。

少年は慌てて鯛を引っ込めた。

どうやら勝手に物を置いてはいけないと知らなかったらしい。

何度も頭を下げている。

「ちょっとかわいそう」

チーコが言う。

蒼井が横を見る。

「話しかけるなよ」

「まだ何もしてない」

「顔に書いてある」

「またそれ?」

少年は階段を下りていった。

だがその途中。

ポケットから、一枚の古びた紙が落ちた。

チーコが拾うより早く、まゆみさんが気づいた。

「落としましたよ!」

少年が振り返る。

紙を受け取る。

しかしその瞬間、まゆみさんは紙に描かれたものを見ていた。

烏文字。

「牛王神符?」

少年の顔が変わった。

「知ってるんですか」

蒼井が六人を見た。

そして、軽くため息をついた。

どうやら今日も、ただの取材では終わらないらしかった。