第九章 鯛を持って帰る
数日後。
悠斗は父親と一緒に飯倉熊野神社を訪れた。
チームケロも追加取材で来ていた。
古い熊野牛王神符は、家族で相談した末、神社へ返納することになった。
「返しちゃうんだ」
チーコが言う。
「はい」
悠斗は神符を見る。
「でも写真は撮りました」
佐久間がうなずく。
「記録として残すのは大事です」
父親が小さな箱を持っていた。
中には、赤い鯛の置物。
「これは?」
近藤君が聞く。
「息子が買いました」
悠斗が照れる。
「勝ったから?」
チーコが聞いた。
「違います」
「じゃあ?」
「帰ってきたから」
「誰が?」
「約束が」
悠斗は恵比寿太田稲荷社を見た。
「曽祖父の神符が、家族の中をずっと回って、俺まで来た。俺が神社へ返す。だから、ちゃんと帰ってきたことになるかなって」
チーコは何も言えなくなった。
横で蒼井が小さく言う。
「いいと思う」
「珍しく即答」
「今日はいいだろう」
「今日も、でしょ」
父親と悠斗は参拝した。
鯛は神社の案内に従って適切に扱い、勝手に置くことはしなかった。
参拝を終えた悠斗は、新しい青いサッカー御守を受けた。
「今度は何をお願いしたの?」
チーコが聞く。
「秘密」
「みんな秘密にする」
「願い事はそういうものです」
ヤヨイが笑った。