麻布十番稲荷神社・参拝長編ストーリー【チーコと蒼井の現代編】

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第八章 冬の七福神

半年後。

一月の港七福神めぐり。

チーコと蒼井は、十番稲荷神社から巡拝を始めた。

「今日は全部回るわよ」

「撮影を含めると時間が足りない」

「前回もそう言った」

「前回は途中で甘味処へ入ったからだ」

「あれは取材」

「四十五分、ぜんざいを食べていた」

「味の確認には時間が必要なの」

蒼井は何も言わず、専用台紙を持った。

宝船の御朱印が押される。

七福神を乗せた朱色の船。

チーコはそれを見つめた。

「帰れなかった人も乗れるかな」

「何の話だ」

「千鶴子さんのお祖父様の弟さん」

「写真は帰った」

「本人は帰れなかった」

「本人が帰りたいと思っていた場所へ、記憶が届いた。それを帰ったと考えてもいい」

チーコは御朱印を見た。

「蒼井、前より柔らかくなったね」

「何が」

「答え方」

「チーコの曖昧な質問に慣れた」

「それ、褒めてる?」

「事実だ」

二人は境内を撮影したあと、かえるの前へ立った。

大小二体。

今日も同じ方向を向いている。

「今回は兄弟に見える」

チーコが言う。

「前は親子と言っていた」

「見る人によって変わるの」

「便利な理屈だ」

「蒼井は?」

「二人組」

「それだけ?」

「ああ」

「面白くない」

蒼井は小さいかえるのほうを見た。

「大きいほうが先に歩き、小さいほうが途中で寄り道する」

「私たち?」

「一般論だ」

「怪しい」

蒼井は先に石段を下りた。

チーコはその背中を見ながら笑った。