飯倉熊野神社・長編ストーリー【チーコと蒼井の現代編】

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第五章 もう一枚の写真

門司の写真館の家族から、追加資料が届いた。

一枚の古写真。

飯倉熊野神社の境内らしき場所。

昭和初期。

若い男性が二人並んでいる。

裏には、

《隆一・征一 飯倉熊野》

と書かれていた。

岡崎正夫へ見せると、老人は息を呑んだ。

「右が父だ」

「左の方は?」

「叔父だ。征一」

弟の征一は、兄より先に出征し、戦死したと聞かされていた。

「待って」

チーコが言った。

「門司で隆一さんと呼ばれていた人、本当にお父様だったのかな」

蒼井の目が変わった。

二人はよく似た兄弟だった。

写真では、体格も顔立ちも近い。

「名前を借りた?」

チーコが言う。

「可能性はある」

調査を続ける。

すると門司の記録に残っていた隆一は、左手の小指を負傷していたという証言が見つかった。

岡崎正夫の父、隆一にはその怪我はない。

弟の征一は、子どもの頃の事故で左手の小指を傷めていた。

「門司にいたのは、弟さん」

チーコが言った。

「可能性が高い」

では、本物の隆一は。

戦死公報どおり、戦地で亡くなった可能性が高い。

弟の征一が、兄の名を名乗っていたのだ。

「どうして」

岡崎が呟いた。