飯倉熊野神社・長編ストーリー【チーコと蒼井の現代編】

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第八章 道を示す人

帰り道。

二人は東京タワーの見える場所で立ち止まった。

夕方の光が、街のガラスへ反射している。

チーコはカメラを構える。

「蒼井、そこ」

「また俺か」

「今日は八咫烏がテーマだから」

「俺は烏ではない」

「知ってる」

「ではなぜ」

「道を示す人」

蒼井は少し困った顔をした。

「大げさだな」

「でも大学の頃からそうだったよ」

「何が」

「私が迷うと、蒼井が方向を決めてた」

「チーコが迷いすぎるだけだ」

「就職するときも」

蒼井が黙る。

「フリーになったときも」

「決めたのはチーコだ」

「でも相談した」

「ああ」

「今の仕事も」

「ああ」

「じゃあ、これからも?」

蒼井がチーコを見る。

「何が」

「私が迷ったら教えてくれる?」

「方向くらいなら」

「最後まで?」

「目的地による」

「またそういう答え」

チーコはカメラを下ろした。

「じゃあさ」

「何だ」

「もし、目的地が同じだったら?」

蒼井の表情が少し変わった。

「それなら」

「うん」

「一緒に行けばいい」

チーコはしばらく動かなかった。

「……それだけ?」

「他に何が必要なんだ」

「もう少し情緒的な言葉とか」

「チーコが求めすぎなんだ」

「映像クリエイターなのに」

「映像で表現する」

「今カメラないじゃない」

「ある」

蒼井は肩の機材を示した。

チーコは笑った。

「そうだった」

二人は再び歩き出した。