麻布氷川神社・長編ストーリー【TeamKero現代編】

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第三章 古い大神輿の写真

佐久間とヤヨイは、神社側から祭礼関連資料を見せてもらっていた。

江戸時代の山車。

明治以降の神輿。

昭和初期の大神輿。

そして長い休止。

令和になってからの修復。

約九十年ぶりの巡行。

ヤヨイは一枚一枚、年代と説明をメモしていく。

「すごいですね」

「何がですか」

「九十年」

「長いですね」

「人間なら、もう一世代じゃない」

佐久間は古写真を拡大していた。

「この写真、昭和初期ですね」

大勢の氏子。

法被。

大神輿。

その後ろに、子どもたち。

「拡大できます?」

ヤヨイが聞く。

佐久間がタブレット上で拡大する。

少年が一人。

十二、三歳くらい。

周囲は神輿を見ている。

だが少年だけが、写真を撮った側――つまりカメラの方向をまっすぐ見ている。

「この子」

ヤヨイが言った。

「気になります?」

「はい」

「理由は?」

「みんな神輿を見てるのに、一人だけこっち見てる」

佐久間は別の写真も確認した。

同じ少年らしき人物が、もう一枚に写っていた。

今度は神輿のすぐ近く。

何かを持っている。

紙?

札?

手ぬぐい?

「名前、分かりますかね」

ヤヨイが聞く。

「一覧があれば」

資料の端に、当時の氏子青年団や町内関係者の名前が記載されている。

だが子どもの名まではない。

「こういう人が、一番消えやすい」

佐久間が言った。

「え?」

「有名人でも役職者でもない。写真には残っても、名前が残らない」

ヤヨイは少年の顔を見た。

「じゃあ、探してみましょう」

「簡単ではないですよ」

「簡単じゃないから、佐久間さんの仕事でしょう」

佐久間は少しだけ笑った。

「人使いが荒い」

「チーコさんほどじゃないです」