麻布氷川神社・長編ストーリー【TeamKero現代編】

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終章 誰と向き合うか

編集会議の帰り。

六人は麻布十番まで歩くことにした。

佐久間とヤヨイが少し前。

「次の資料、善福寺も見ます?」

「近いですしね」

「逆さ銀杏、撮りたいです」

「ヤヨイさんは撮る側じゃないでしょう」

「スマホがあります」

その後ろ。

近藤君とまゆみさん。

「今日の原稿、読者目線の導入はどうします?」

「セーラームーンから入るのもいいけど、九十年ぶりの神輿のほうが強いかな」

「両方あるのが麻布氷川らしいんですよね」

最後にチーコと蒼井。

「みんな、それぞれ違うね」

チーコが言う。

「何が」

「見てるもの」

「ああ」

「佐久間君とヤヨイさんは昔の資料。近藤君とまゆみさんは今の人。蒼井は映像全体」

「チーコは?」

「写真」

「それだけ?」

チーコは少し考えた。

「人かな」

「人?」

「写真って、結局、人がいないと寂しい」

「神社建築を撮ることもあるだろ」

「でも、その場所に誰がいたとか、誰が見たとか考えちゃう」

蒼井はうなずいた。

「今回の少年も」

「うん」

坂を下る。

夕方の麻布。

「ねえ、蒼井」

「何だ」

「六人でいると、私たち二人だけのときと違うね」

「当たり前だ」

「そうじゃなくて」

チーコは言葉を探す。

「二人だと、蒼井が私を見てくれるでしょ」

「仕事上な」

「そこは余計」

「続けて」

「六人だと、みんなが違う方向を見てる。でも最後は同じものを作る」

「ああ」

「それって、ちょっと神輿みたい」

蒼井が笑った。

「かなり強引だな」

「みんな違う位置で担ぐけど、進む方向は一緒」

「悪くない」

「でしょ」

少し前からヤヨイの声。

「チーコさん、聞こえてますよ」

「え?」

「神輿の話」

近藤君も振り返る。

「いい例えですね」

まゆみさんもうなずく。

佐久間だけは、

「担ぎ手は方向だけでなく、タイミングも合わせる必要があります」

と言った。

「佐久間君、そこは情緒!」

全員が笑った。

そのときケロからグループメッセージ。

《次回候補:善福寺》

チーコが声を上げる。

「もう来た!」

蒼井がスマートフォンを見る。

《逆さ銀杏、幕末アメリカ公使館、ハリス。徒歩圏内です》

ヤヨイが振り返る。

「さっき話してたところ」

佐久間が言う。

「資料量はかなり多そうですね」

近藤君。

「門前の食事処も調べましょう」

まゆみさん。

「またそこ?」

「大事です」

チーコが笑う。

六人は麻布十番の街へ向かって歩いていった。

後ろに麻布氷川神社。

向き合う二体の狛犬。

九十年ぶりに町へ戻った大神輿。

そして、名前が忘れられかけていた一人の少年。

誰かと向き合うこと。

過去と向き合うこと。

自分と向き合うこと。

同じ方向へ進むためには、必ずしも同じものを見る必要はない。

違う場所から。

違うものを見て。

違う言葉を持ち寄る。

そうして一つの物語を作る。

それが、たぶん。

チームケロという小さなチームの、いちばん面白いところだった。